先天的ではなく後天的に感じるもの
後悔病棟/垣谷美雨さん
読了。
一気に読み終わってしまった。ファンタジー感ある作品はそもそも好きであるため、そうした期待を込めて手に取った。しかしこの「魔法の聴診器」はデバイスとしてファンタジーではあるものの、実として患者と向かい合って対話が苦手なルミ子が乗り越えるためのキッカケでしかなかった。
話を通じ学び・感じたことは多いが自分の中で最も強く感じたことは以下であった。
自分の仕事がMRということもあり、医師と話す機会はこのような状況でも幸い多い。
会う医師は基本的に人柄も良く(全員ではないが)、こうした人格は先天的なものだと感じていた。
主人公のルミ子は冒頭、死期の近い患者様に「あと少しで楽になれますよ」などと余計なことを言い、あまつさえそれの悪い要素が何かわからなかった。
もちろん現実にここまで鈍感な人は珍しいかもしれない。しかし、死に近い患者様に対する医師の言葉選びなどは、自分では想像しきれないことが多いのではないだろうか。医師がどのようなことで普段患者へ接しているのか、医師も現場で気丈に振舞っていても、今自分が顧客である医師のニーズを掴むことに苦労しているように、患者様への接し方で実は悩んでいたのではないか。そうしたことを考えるキッカケとなり、非常に勉強になった。
自分たちの仕事は時代が変わり、「私の家政婦、ナギサさん」でも伝えられたように、今では医療の悪役でも製品をコールする事だけでもない。
医師の先にいる患者様に必要な薬を届けるために「相手を知る行動」が求められる今、自分にはない視野・視座を広げる必要性を改めて実感できた。